2026年3月に開催されたAI甲子園。競技テーマにおいて、600点満点中448点(正解率75%)という優秀な成績を収めたのが、広島県立賀茂北高等学校「広島賀茂北AI部」です。一切の手作業を排した「完全自動化プログラム」と、生成AIをアドバイザーに迎えた最新モデルの選定。個人参加ながら組織的な開発に匹敵するスマートな戦い方に迫りました。
■ 競技テーマ:30分で「画像検索・探索モデル」を構築せよ
—– まずは企業コーチを務められた島軒コーチ、今回の競技テーマについて教えてください。
島軒コーチ:競技の内容は、国土地理院の航空写真から特定のランドマークをAIに推論させるというものです。事前に100箇所の画像が公開されますが、当日その中から30箇所、さらに「初見」となる追加施設が5箇所、計35箇所のランドマークを特定しなければなりません。
問題画像は、事前公開画像の周囲50%を含む範囲から「拡大縮小・回転・ノイズ」といった加工が施された状態で切り出されます。これらを制限時間わずか30分という極限状態で、精度の高い「画像検索・探索モデル」として完成させる必要がありました。
■ 開発環境:無料版「Google Colab」で挑む高効率学習
—– 非常にタイトな競技ですね。広島賀茂北AI部(個人参加)としては、どのような環境で開発をされたのですか?
広島賀茂北AI部:私は、Google Colabの無料版(GPU: T4)を使用しました。限られたリソースの中で、いかに無駄なく学習を回すかを最優先に考え、効率的なプログラム構成を追求しました。
■ データ戦略:API連携による「一切手を使わない」完全自動化
—– データセットの作成方法が非常に高度だったと伺いました。
広島賀茂北AI部:はい。私の最大のこだわりは、「一切、手作業での切り出しはしない」という方針です。事務局から提供された座標データを元に、APIを叩いて建物のポリゴンデータ(多角形の形状データ)を取得する仕組みを自作しました。
—– つまり、人間が画像を見て切り出す工程を完全にゼロにしたのですね。
広島賀茂北AI部:そうです。条件に合う建物の範囲を正確に計算し、国土地理院のベクトル画像URLを自動で取得するプログラムを組みました。これにより人為的なミスを徹底的に排除し、当日の追加施設(初見の課題)に対しても、プログラムを実行するだけで即座に対応できる体制を整えました。
■ 苦渋の決断:制限時間の壁とエポック数の調整
—– モデル選定や学習プロセスでも工夫があったそうですね。
広島賀茂北AI部:モデル選定にあたってはLLM(生成AI)に相談し、推奨された最新の軽量モデル「ConvNeXt V2 Nano」を採用しました。ただ、一番苦労したのは時間管理です。
練習試合の時は30エポック(学習回数)回して精度を追求していましたが、本番の30分という制限時間を考えると、それでは間に合わないことが分かりました。そのため、本番ではエポック数を削り、学習時間を12~15分程度に抑えるという決断をしました。その分、128通りの加工パターンで検証(Validation)を行うなど、評価プロセスの自動化にも力を入れました。
■ 振り返り:スマートなエンジニアリング精神を次世代へ
—– 最後に、今回の挑戦を終えての感想をお願いします。
広島賀茂北AI部:学習から推論までをすべてプログラムで完結できた点には、確かな手応えを感じています。ただ、本番の短い時間内での「検証」の精度にはまだ課題があると感じました。この悔しさと自動化のノウハウは、賀茂北AI部の武器として後輩たちに引き継いでいきたいです。
■ コーチからの総評:自動化の先にある「検証」の重要性
—– 島軒コーチ、広島賀茂北AI部の活躍を振り返っていかがですか。
島軒コーチ:彼の「一切手を使わない仕組み化」へのこだわりは、学生の枠を超えたプロのエンジニアに近いもので、非常にスマートでした。最新の知見をLLMから取り入れる柔軟さも、個人参加とは思えないほど洗練されていました。
一方で、上位校との正答率の差がどこでついたかを分析すると、「作成したデータセットに対する検証(評価)の深さ」に課題があったと感じます。自動化で時間を短縮したその先に、いかに泥臭くデータの質を担保するか。そこをさらに強化できれば、彼のシステムはより完璧なものになります。今回の課題を冷静に捉えている彼なら、次はさらに高い精度を叩き出してくれるはずです。本当にお疲れ様でした!
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▼ 専門用語・固有名詞リスト
広島賀茂北AI部:広島県立賀茂北高等学校の生徒によるAI活動。
Google Colab:Googleが提供するクラウド型の開発環境。
API:プログラム間で情報をやり取りするための窓口。
ポリゴンデータ:建物の形などを表す多角形のデータ。
エポック(Epoch):学習データ全体を1回学習すること。
ConvNeXt V2 Nano:最新技術を取り入れた、高効率な画像認識モデル。
LLM:ChatGPTなどの大規模言語モデル。
