競技テーマで好成績のせんだいAI部「HEKAFI」にインタビュー

2026年3月20日に開催された「AI甲子園」。競技テーマにおいて、国内1位・スコア517点(正解率86%)という優秀な成績を収めたのが、せんだいAI部「HEKAFI」の皆さんです。

限られた時間と環境の中で、いかにして高精度な推論を実現したのか。その舞台裏を伺いました。

競技テーマ:30分で「画像検索・探索モデル」を構築せよ

—– まずは企業コーチを務められた島軒コーチ、今回の競技テーマの難しさについて教えてください。

島軒コーチ: 競技の内容は、国土地理院の航空写真から特定のランドマークをAIに推論させるというものです。事前に100箇所の画像が公開されますが、当日その中から30箇所、さらに「初見」となる追加施設が5箇所、計35箇所のランドマークを特定しなければなりません。

問題画像は、事前公開画像の周囲50%を含む範囲から「拡大縮小・回転・ノイズ」といった加工が施された状態で切り出されます。これらを制限時間わずか30分という極限状態で、精度の高い「画像検索・探索モデル」として完成させる必要がありました。

開発環境:本番を見据えた「Google Colab」への移行

—– 非常にタイトな競技ですね。HEKAFIの皆さんは、どのような環境で開発を進めたのでしょうか。

HEKAFI: 開発の初期段階では、手応えを掴むためにGPUを搭載した高性能なローカルPCを使用していました。しかし、本番はノートPCかつGPUが使えない制限下の環境になることが分かっていたため、途中からは「GoogleColab」の無料版へ移行し、本番と同じ制約の中でモデルを磨き上げました。

データ戦略:AIの「弱点」を人間が補う目視フィードバック

—– 今回の勝因として「データセットの準備」が大きかったと伺いました。

HEKAFI: はい。1施設あたり2枚の元画像から、1枚につき500枚、計1,000枚の教師データを生成しました。当日の30分という短い時間でこれを完璧に実行するために、画像拡張(Augmentation)を自動で行うプログラムを事前に作り込み、何度もシミュレーションを重ねました。

—– 具体的には、どのような加工を施したのですか?

HEKAFI: ランダムなクロップ(切り出し)に加え、モノクロ化、明るさや色の変化を加えました。加工で工夫した
のは、検証過程でAIの「コンフィデンス(確信度)」が低い画像を抽出し、自分たちの目で直接確認したことです。

そこで気づいたのが、「人間なら一目でわかるような場所」をAIが迷ったり間違えたりしているという事実でした。
AIの弱点がどこにあるのかを肌で感じ、そのポイントを補強するようにデータ拡張プログラムへフィードバックを繰
り返したことが、精度向上に直結しました。

戦略的選択:あえて「上位モデル」を捨て、データの質で勝負する

—– 採用したモデル「ResNet18」についても、検討の経緯を教えてください。

HEKAFI: 実はResNet50など、より深い階層を持つ高精度なモデルも試したんです。でも、競技の「30分」という壁は想像以上に厚かった。学習に時間を取られすぎて試行錯誤ができなくなるリスクがありました。

そこで、あえてモデルを軽量なResNet18に絞り、その分を「データの質」を上げる作業に充てるという戦略的な割
り切りを行いました。チーム内でも「モデルの構造検討」「パラメータ調整」「データセットの質向上」と役割を明確に分担し、限られた時間で最大限のパフォーマンスを出せる体制を整えました。

提出の瞬間:祈るような気持ちで見た「追加5施設」

—– 最後に、今回の結果を振り返っていかがですか。

HEKAFI: 提出ボタンを押すときは、本当にドキドキしました。特に当日追加された5施設に対して、自分たちのAI
がどんな推論を出しているのか……。画面を見つめながら「頼む、当たってくれ!」と祈るような気持ちでした

国内1位という結果は嬉しいですが、その追加施設で一部誤判定が出てしまった点は非常に悔やまれます。人間なら
わかる違いを、AIにも完璧に理解させる。今回の経験を糧に、さらに強固なモデルを目指していきたいです。

コーチからの総評:シミュレーションがもたらした勝利

—– 島軒コーチ、最後に今回のHEKAFIの活躍を振り返って感想をお願いします。

島軒コーチ: 今回、彼らが国内1位という素晴らしい結果を出せた最大の要因は、徹底した「事前準備」と「データ
の検証」にあります。30分という制限時間を意識し、プログラムの自動化や適したモデルの選定、データセットの
質の確認等、本番までにこれらを繰り返し検証したことが、本番で好成績を出せたことに繋がった思います。この泥
臭い準備があったからこそ、本番のプレッシャーの中でも戦略的に実行できたのだと思います。

当日追加された5施設で思うようにスコアが出なかったことについて、課題を即座に「データの質」の問題だと分析できているので、今後は更にスコアの高いモデルを作れると感じました。国内1位、本当におめでとうございます。

▼ 専門用語・固有名詞リスト

  • せんだいAI部HEKAFI:優勝チーム名。
  • 国土地理院:日本の地図情報のソース元。
  • Google Colab:クラウド型の開発環境。
  • データ拡張(Augmentation):加工によって学習データを増やす技術。
  • コンフィデンス(確信度):AIの推論の自信を数値化したもの。
  • ResNet18 / ResNet50:深層学習の代表的なモデル。
  • ファインチューニング:特定のタスクに合わせてモデルを微調整すること。

ソースコードについて

やまがたAI部のMoodleにてソースコードや開発資料を公開します。別途ご参照ください。

https://learn.yamagata-ai.org/moodle2025/course/section.php?id=98