競技テーマで好成績の台湾「ワシントン高校」にインタビュー

2026年3月に開催されたAI甲子園。並み居る強豪を抑え、正解率95%という驚異的なスコアで全体1位に輝いたの
が、台湾から参戦したワシントン高校(台北市立南港高級中学)のチームです。有償版Google Colabを駆使した高
度な計算戦略と、独自の「AI裁判官」による徹底した品質管理。世界基準の技術力の裏側に迫りました。

競技テーマ:30分で「世界に通用する推論モデル」を構築せよ

—– まずは企業コーチを務められた島軒コーチ、今回の競技テーマについて教えてください。

島軒コーチ: 競技の内容は、国土地理院の航空写真から特定のランドマークをAIに推論させるというものです。事前に100箇所の画像が公開されますが、当日その中から30箇所、さらに「初見」となる追加施設が5箇所、計35箇所のランドマークを特定しなければなりません。

問題画像は、事前公開画像の周囲50%を含む範囲から「拡大縮小・回転・ノイズ」といった加工が施された状態で切り出されます。これらを制限時間わずか30分という極限状態で完成させる必要がありました。ワシントン高校は、この条件下で正解率95%という圧倒的な数字を叩き出しました。

開発環境:有償版Google Colabによる「極限の効率化」

—– 驚異的な正解率ですね。どのような環境で開発を進められたのですか?

ワシントン高校: はい。まず国土地理院のサイトから画像を取得する際、ターゲットの周辺環境を把握するために、あえて範囲を外側に30%拡張して取得しました。河川や海岸線といった「視覚的な錨(アンカー)」をAIに教えるためです。

さらに、自作ツール「utils_v2.py」を使い、画像を全景と局所詳細の多段階パッチングで切り出し、異なる解像度の特徴を融合させました。50%のオーバーラップを持たせたスライディングウィンドウ方式により、端にある特徴の欠落を完全に防いでいます。

学習戦略:Online Triplet Miningと「三段階」の最適化

—– 学習プロセスについても、非常に高度な技術を導入されています。

ワシントン高校: 特徴の識別能力を極限まで高めるため、バックボーンには高効率なRegNetY-3.2GFを採用しました。損失関数にはOnline Triplet Mining(Batch Hard)を導入し、AIにとって「最も識別が難しいデータ」を重点的に学習させています。

また、学習率は三段階で調整しました。最初は「Warmup」でゆっくり始め、次に「Cosine Annealing」で収束させ、最終段階ではSWA(重み平均)によって未知のデータに対する汎化能力を高めました。

独自技術:30種の干渉エフェクトと「AI裁判官」

—– 最も驚かされたのが、独自のシミュレーション体系です。

ワシントン高校: 実戦でのノイズや歪みに対応するため、30種類以上のランダムなエフェクトを付与するデータ拡張を行いました。

さらに、生成した擬似画像が「公式データと見分けがつかないほどリアルか」を判定する別のAI、「AI裁判官(Discriminator)」を訓練しました。この裁判官を騙せるほど高品質な画像のみを訓練に使用することで、モデルが理想論ではなく、現実の厳しい画像に対応できるようにしたんです。これが正解率95%を実現した最大の鍵です。

振り返りと将来:次なるステージへ

—– 今回の完全勝利を振り返って一言お願いします。

ワシントン高校: 100%の自動化と、AI裁判官による品質管理という僕たちの哲学が証明されて嬉しいです。今後はCNNとVision Transformer(ViT)を組み合わせた双分枝構造へのアップグレードを予定しています。台北の地で、さらに精度の高いAIを追求し続けます。

コーチからの総評:理想論を捨て「実戦」に徹した仕組み化の勝利

—– 島軒コーチ、ワシントン高校の技術を振り返っていかがですか。

島軒コーチ: 彼らの凄みは、有償版リソースを使いこなす計算戦略と、「いかに過酷な現実環境に適応させるか」という実戦的な視点にあります。 color_analyzer.py で色分布を合わせる校正まで行っていた点には脱帽しました。

自動化による効率化、そしてAI裁判官による品質管理。台北のチームが示した「AIを徹底的に鍛え上げるための哲学」は、世界基準のエンジニアリングそのものでした。全体1位、本当におめでとう。

▼ 専門用語・固有名詞リスト

  • 台北市立南港高級中学:ワシントン高校の正式名称
  • RegNetY-3.2GF:Metaが開発した高効率・高性能なモデル。
  • Online Triplet Mining:難易度の高いサンプルを優先的に学習し、識別精度を高める手法。
  • SWA(Stochastic Weight Averaging):重みを平均化し、安定したモデルを作る技術。
  • AI裁判官(Discriminator):本物に近い高品質なデータのみを厳選するための識別器。
  • 有償版Google Colab:より強力なGPUと計算時間が提供されるクラウド開発環境。

ソースコードについて

やまがたAI部のMoodleにてソースコードや開発資料を公開します。別途ご参照ください。

https://learn.yamagata-ai.org/moodle2025/mod/url/view.php?id=236